会長挨拶
このたび、ウェルビーイング学会第5回学術集会の大会長を拝命いたしました。まずは、本学会役員、そして会員の皆様の平素よりのご尽力に、心より敬意と感謝を申し上げます。皆様方が学会活動を盛り上げていただいているおかげで、骨太方針はじめ日本政府の推進する政策にはWellbeingがしっかり位置づけられるようになり、国際的にも、国連のWorld Happiness ReportでJapan Chapterが設けられ、2028年にはOECD Wellbeing Forumが日本で開催されることが決定いたしました。
そうしたなか、第5回学術集会では、「Sustainable Wellbeing Goals ~Beyond SDGs、Beyond GDPに向けて」を大会テーマとして掲げました。
いま私たちは、大きな時代の転換点に立っています。気候変動、人口減少、少子高齢化、格差、孤独・孤立、さらには生成AIをはじめとするテクノロジーの急速な進展など、社会を取り巻く環境は大きく変化しています。これまでの近代社会は、経済成長や効率性、標準化、規模の拡大を追求することによって、私たちの暮らしを豊かにしてきました。一方で、その延長線上だけでは解決することのできない課題も、顕在化しています。
SDGsは、こうした課題に世界全体で向き合うための重要な共通言語となりました。しかし、2030年はSDGsのゴールの年となっており、Beyond SDGs, Beyond SDGsの議論が国際社会でも本格化しております。2030年のその先を見据えたとき、私たちはさらに一歩進み、「何を持続させるのか」だけではなく、「どのような社会をつくり、どのように生きたいのか」を問い直す必要があります。
そこで本大会では、「Beyond SDGs」「Beyond GDP」という視点を提示します。GDPの成長や物質的豊かさなど近代が生み出してきた成果を否定するものではありません。その恩恵を十分に受け継ぎながらも、経済成長や効率性のみを豊かさの尺度とする発想を超え、尊厳、多様性、つながり、自然との共生、そしてウェルビーイングを中心に据えた新たな社会のあり方を構想していこうという試みです。
その重要な舞台の一つが「地方」「コミュニティ」です。人口減少を、ともすれば地域の「縮小」や「衰退」としてのみ捉えがちな時代にあって、地方には、都市とは異なる豊かさがあります。人と人とのつながり、自然や文化、歴史、土地に根差した営み、そして一人ひとりが役割を持ち、互いに支え合う関係性。これらを改めて価値として捉え直すことは、地方創生のみならず、日本社会全体の未来を考えるうえで極めて重要です。
地方創生とは、単に人口や経済規模を増やすことではありません。その地域に暮らす人、関わる人が、「ここで生きていてよかった」「この地域に関わることができてよかった」と感じられる社会をつくることです。地域から生まれる新しい実践や知恵は、これからの日本、さらには世界が「Beyond SDGs」「Beyond GDP」を考えるうえで、大きな可能性を秘めています。
本大会では、研究者のみならず、自治体、企業、教育、医療、福祉、文化、地域づくりなど、多様な領域で実践に取り組む皆様とともに、学術知と実践知を交差させながら議論を深めてまいります。異なる世代、異なる専門、異なる地域の経験を持つ人々が集い、互いの知恵と実践を持ち寄ることによって、これまでの延長線上にはない、新しい社会の姿を構想する場にしたいと思います。
SDGsのその先に、私たちはどのような社会を描くのか。近代の先に、どのような豊かさを創り出していくのか。SWGsをキーワードとしながら、次の世代へつながる議論を深めていきたいと思います。
第5回学術集会が、これらの問いを皆様とともに考え、新たな実践へとつなげていく機会となることを願っております。多くの皆様のご参加を、心よりお待ち申し上げております。
第5回ウェルビーイング学会学術集会
大会長 鈴木 寛
東京大学公共政策大学院 教授