会長挨拶
このたび、ウェルビーイング学会第4回学術集会の大会長を拝命いたしました。まずは、本学会理事長をはじめ理事各位、そして会員の皆様の平素よりのご尽力に深甚なる敬意と感謝を申し上げます。このたび令和八年三月二十一日(土)、本大会を開催いたします運びとなりましたことを、謹んでご報告申し上げます。
私たちが直面しているのは、かつてない複雑性と不確実性に満ちた時代です。社会の分断は深まり、多様な価値観の共存は、新たな緊張と対立を生み出しています。そうした状況にあって、ウェルビーイングは個人の安寧にとどまらず、他者や社会との関係性を抜きに語ることはできないという認識が、ますます切実なものとなっております。
この問題意識のもと、本大会では「Better co-being」を主題として掲げました。すなわち、個人の状態としての「ウェルビーイング」を、他者との「ともにあるあり方(co-being)」へと拡張し、その質を問い直す試みであります。それは単なる共存や協調にとどまらず、異なる背景や信念を持つ者同士が、その違いを尊び、ときに痛みを引き受けながらも共鳴しあい、新たな関係性を創造する不断の営みです。
今回の会場となる直島は、瀬戸内の海に浮かぶ小島であり、かつて工業の島として歩みながらも、いまや自然とアートが共鳴する再生の物語を宿す地となっています。この場のもつ力が、「Better co-being」という理念を思索するにあたり、比類なき示唆と着想をもたらしてくれることを確信しております。従来の学術的セッションに加え、アートを媒介とする対話型ワークショップや、生成AIの可能性を体感する企画なども併せて展開し、理論と実践、専門知と生活知とを交差させる創造的な場を創出いたします。
本大会が、皆様お一人おひとりにとって、自らと他者、そして社会との「ともにあるあり方」を深く省察する契機となることを願ってやみません。この直島の地において、ともに問いを重ね、語り合い、私たちの未来社会が目指すべきウェルビーイングの姿を、皆様と共に描いてまいりたいと存じます。多くの皆様のご参集を、心よりお待ち申し上げております。
第4回ウェルビーイング学会学術集会
大会長 宮田 裕章
慶應義塾大学 医学部 医療政策・管理学教室 教授